遺言書に記載された財産が既に処分されていた場合
遺言書に記載された財産が既に処分されていた場合
遺言書には不動産を遺贈させるって書いてあるけど、亡くなった時点では既に贈与で別の人名義になっていたというご相談がありました。ここでは、遺言内容が撤回されたとみなされるケースについて解説します。
遺言はいつでも撤回可能
「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる」
遺言者は、自分の財産をどのように分けるか、いつでも自由に決め直すことができます。遺言が残されていても、後から考えが変われば、新たに遺言を書き直したり一部を修正したりすることが可能です。
ポイント
- 遺言者が遺言内容を変えたい場合、いつでも変更や撤回ができる権利を持っています。
- そのため最新の遺言内容が有効とされ過去の遺言と矛盾する場合は、新しい内容が優先されます。
遺言内容が自動的に「撤回された」とみなされるケース
遺言者自身が遺言内容に反する行為をした場合、法律上その行為自体が「撤回の意思表示」と見なされることがあります。これは、特に遺言内容に記載された財産が遺言者の意思で処分されてしまった場合に適用されます。
具体例:遺言内容と矛盾する行為による撤回
- 記載財産の売却や譲渡
- 遺言書に「Aさんに不動産を譲る」と記載されている不動産が、遺言者の生前に売却されていた場合、この不動産に関する遺言内容は自動的に撤回されたとみなされます。これは、遺言者が意図的に不動産を売却したことで、遺言に書かれた内容が現実に実行できなくなったためです。
- 記載財産の変更・改造
- 遺言書に記載された財産が生前に異なる形に変更された場合も、撤回とみなされる場合があります。たとえば、「Bさんに美術品を譲る」とされていたものが、生前に遺言者の手で別の形態に改造された場合、元の形態のまま遺産を渡すことができないため、遺言内容は無効とされることがあります。
重要な考え方:
遺言者が遺言内容と矛盾する行為をした場合、それは「遺言を変更したい」という意思表示と解釈されることが民法の基本的な考え方です。
撤回があった場合の実務上の対応
遺言書に記載された財産が既に存在しない場合や、遺言と矛盾する状況が生じている場合には、以下のような対応を行います。
- 遺言執行者による確認
遺言執行者は、遺言内容を実現するために、遺言書に記載された財産が現存しているか確認する必要があります。もし財産が処分されていた場合、その部分の遺言は無効とみなし、他の遺産について分配を進めます。 - 必要に応じて専門家に相談
財産処分が生じている場合、遺言執行者や相続人間の協議で解決しにくい場合は、専門家に相談することで円滑に手続きを進められます。
まとめ:遺言内容と遺言者の意思変更への配慮が大切
民法第1022条によると、遺言者が自らの意思で遺言内容と矛盾する行為を行った場合、それは遺言の撤回と見なされるため、遺言書の内容を改めて確認することが大切です。遺言執行者や相続人は、遺言内容と財産状況を確認し、スムーズな相続手続きの実現を目指しましょう。
広島司法書士会 (登録番号:第613号)
広島県行政書士会 (登録番号:第05340722号)
広島県土地家屋調査士会 (登録番号:第1573号)
JMAA M&Aアドバイザー認定
セミナーズマーケティング認定講師
NLPプラクティショナー、マスタープラクティショナー、コーチコース認定
現在 法務総合事務所文殊パートナーズ代表