遺産分割調停の利用
相続人全員で行う遺産分割協議において、話が進まない・まとまらない場合には、遺産分割調停の手続きをするという方法もあります。
遺産分割調停は、相続人のうち1人でも複数人でも申し立てることができます。調停を行う場合には、相続人の1人の住所地を管轄する家庭裁判所(広島家庭裁判所等)か、相続人同士が合意のもと決めた家庭裁判所に、遺産分割調停の申立を行います。
遺産分割がまとまらない場合に、調停のほか、審判で決めていく方法もありますが、原則的には調停前置主義がとられているため、まずは調停を行うことになります。調停によってもまとまらない場合には、遺産分割審判(裁判)に移行するケースもありますが、それは非常に稀なケースとなります。
遺産分割調停を利用するケース
ではどのような場合に遺産分割調停を利用するのでしょうか?
遺産分割協議がまとまらないときには、法律上での判断が求められる場合があります。具体的には、「遺留分」、「寄与分」、「特別受益」などがあげられます。
遺留分を求めての調停
遺言書によって1人の相続人が全ての財産を相続する旨が記載してあり、自分の法定相続分が侵されているため、最低限の相続分を確保したい。しかし、直接話し合いをすることが困難な場合などのケースが該当します。
特別受益を原因とした調停
特別受益とは生前の贈与や遺贈について、遺産の先渡しと考えて公平の観点から相続分を算定する制度です。
特別受益の額については、当事者全員にての合意ができない場合、まずは家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行い、特別受益の額のみを確定させる調停の申立ではなく、遺産分割調停を申し立てすることとなります。
他方、遺産分割調停の中で解決しない場合には、遺産分割の審判の中で判断がなされます。審判は強制的な決定ですので当事者に対する拘束力があります。審判に対して不服がある場合には、即時抗告を行うことにより広島高等裁判所等で審理をすることになるのです。
まずは、証拠をきちんと集めることが全ての出発点です。過去の預金通帳や不動産の権利関係に関する全部事項証明書、不動産の売買契約書やその他の各種契約書を集めて、特別受益に該当するかどうかについて判断が可能な証拠をまずはそろえることが大切です。
なお、遺産分割調停の流れと必要書類は下記を参考にしてください。
遺産分割調停申立の流れ
- 遺言の調査、相続人調査と財産調査
- 財産目録と、相続関係説明図の作成
- 遺産分割協議の提案→話合がまとまらない
- 広島家庭裁判所等へ遺産分割調停の申立
- 調停が受理されると、1か月に1回のペースで調停を行う
※遺産分割調停は、一般的に最低でも4~5回行います。調停がまとまるまでには、通常1年~1年半くらいの期間がかかるのが一般的です。
遺産分割調停の必要書類
- 遺産分割調停申立書
- 財産目録
- 相続関係図
- 相続人全員の戸籍謄本
- その他添付書類