預金の名義変更
このページでは預貯金の名義変更について取り扱います。
被相続人が広島在住の方であった場合、相続が発生し被相続人が亡くなったことを広島の銀行等に知らせると、被相続人の口座は凍結されます。凍結された口座は銀行等が指定する一定の手続きを踏まないと、預貯金を下ろしたり、解約の手続きが出来なくなります。
原則として、相続人であっても被相続人名義の預貯金を勝手に引き出すことは行ってはいけません。被相続人が亡くなった後、銀行口座が凍結する前に相続人の一人が引き出してしまったというのは、あとあと相続トラブルに発展しかねません。引き出されてしまった預貯金を取り戻す手続きは、通常の相続手続きよりも難しくなる可能性があります。もし、他の相続人がこのようなことを行うリスクがあるようならば、とりあえず金融機関に口座の所有者が亡くなったことを知らせる連絡を行っておきましょう。
ここでは、銀行口座の凍結後にどのような手続きをすべきかお伝えさせていただきます。重要なのは遺産分割協議により遺産が相続人の誰が引き継ぐのかを決定しているかどうかです。その前後で方法が異なりますので注意してください。
遺産分割協議の前に引き出すケース
本来であるならば遺産分割協議が完了した後にお金を引き出す方が順当な手続きでありますが、葬儀費用等の支払いのため、急遽必要になることもあります。金融機関の対応にもよりますが、銀行指定の相続人全員の同意書をもって可能とするところもあります。しかしながら遺産分割協議前に被相続人の口座からお金を引き出すことはトラブルにもつながりかねませんので、あまりお勧めはできません。
なお、民法の改正により、遺産分割における公平性を図りつつ、相続人の資金需要に対応できるよう、今回の相続法改正により「相続された預貯金について、相続人全員の同意がなくても、遺産分割協議前に払戻しが受けられる制度」が新設されました。
この制度は、次の2つの手続きにより利用することができます。
- 金融機関の窓口で直接仮払いの請求
- 家庭裁判所の保全処分を利用
1. 金融機関の窓口で直接仮払いの請求
共同相続人のうちの一人が金融機関の窓口で仮払いの請求をする場合は、相続開始時の預貯金額×1/3×その相続人の法定相続分=単独で払戻しをすることができる金額となります。
例えば、1200万円の預貯金があり、共同相続人が配偶者と長男、次男の三人で、長男が払戻しの請求をした場合、 1200万円×1/3×1/4=100万円 が、長男が払戻しを受けられる金額です。
ただし、上記計算式で算出した金額の範囲内であれば自由に引き出せるというわけではありません。
この改正法の趣旨は、残された人が当面お金に困らないようにすることなので、改正法では、「金融機関ごと(複数の口座がある場合は合算)の上限金額」を省令で定めることとしており、その上限額を150万円(標準的な必要生計費、平均的な葬儀費用等を勘案した法務省の定める額)とする案が2018年9月28日に公表されました。
2. 家庭裁判所の保全処分を利用
仮払いの必要性があると認められる場合、他の共同相続人の利益を害さない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。
この手続きは、引き出し額に上限はなく、申立額の範囲内で必要性が認められれば、特定の預貯金の全部を取得することもできる点がメリットですが、家庭裁判所への申立てなど煩雑な手続きをしなければならないので、手間と費用と時間がかかるという点や、相続債務の弁済のためなど、仮払いの必要性を疎明しなければならない点がデメリットといえます。
遺産分割協議の後に引き出すケース
遺産分割協議書の作成が完了している場合は、その預貯金を誰が相続するのかを相続人全員が合意していることになります。よって、後々相続トラブルが発生する可能性が低く、このタイミングで手続きを行うことが一番理想的です。
預貯金の名義変更を行うには、戸籍等複数の書類の提出を必要とします。手続きに関してご不明な点がありましたら、広島相続遺言まちかど相談室までお気軽にお問合せ下さい。