不在者が相続人にいる場合の遺産分割
遺産分割協議は相続人全員が署名押印し、その内容に合意している必要があります。ただ、相続人自体が行方不明で、連絡を取ることが困難なケースもあります。不在者であることが認知されている状態であっても、相続人であることには変わりませんので、その人を除いた遺産分割協議は当然ながら無効です。しかしそれでは相続財産の分割がいつまでも行えない可能性があります。そのようなことを解消するため、下記の手続きを行うことにより遺産分割協議が進められるよう定められています。方法は2つあります。
- 失効宣告の申立てを行い、確定後、遺産分割協議をする
- 不在者の財産管理人を選任し、財産管理人が遺産分割協議を行う
1. 失効宣告の申立てを行い、確定後、遺産分割協議をする場合
失踪宣告とは生死不明な者に対して、法律上死亡したとみなす制度になります。失効宣告の申立ては広島家庭裁判所等に利害関係人が行います。今回対象となる相続に影響があるだけでなく、不在者本人が法律上、死亡した人となるため婚姻関係が解消されたり、その人そのものの相続も開始することになります。
失効宣告の申立てが認められる要件は以下になります。
- 従来の住所等から去ってから7年以上生死が明らかでない(普通失踪)
- 戦争や船舶の沈没、震災などの危難に遭遇し、その危難が去ったのちより1年以上生死が不明(危難失踪)
失踪宣告の申立てが認められると不在者は死亡したものとみなされます。普通失踪か危難失踪かによって死亡したとみなされる日の条件が異なります。普通失踪の場合、生死不明になって7年間が満了したとき、危難失踪の場合は危難が去った時です。危難失踪の要件は危難が去ってから1年間が過ぎていることですが、危難が去った時に死亡したとみなされます。
◆注意点
失踪宣告により不在者は死亡したものとみなされます。しかしながら相続権が失われるわけではありません。失効宣告によっていつ不在者が死亡したものとみなされるかにより、誰が今回の相続人になるかは異なるので、状況により判断が必要です。相続権を受け継いだ人は、遺産分割協議に参加しなければなりません。以下の例で確認してみましょう。
例1)
- 被相続人:A(6年前に死亡)
- Aの相続人:B,C,D
*Bは行方不明になってから14年間が経過している(普通失踪)
今回失踪宣告によってBは7年前に死亡したとみなされました。この場合被相続人のAよりBの方が先に亡くなっている為、Bに子がいたとするとAの相続財産はBの子が代襲相続することになります。よってBの子もC,Dと遺産分割協議に参加することになります。
なお、AよりもBが後に亡くなっている場合はBの相続人が相続権をそのまま引き継ぐことになります。仮にBに妻と子がいた場合は妻と子がC、DとともにAの遺産分割協議を行います。
2. 不在者の財産管理人を選任し、財産管理人が遺産分割協議を行う
失踪申告には死亡とみなされるための期間の要件があります。もしこれに満たない場合には広島家庭裁判所等に不在者財産管理人の申立てを行います。不在者財産管理人は行方不明者の財産を管理することが職務です。選任されることによって、遺産分割協議を進めることが可能になります。
しかし、不在者財産管理人を選任する際には注意が必要です。それは、事案によっても異なりますが、あらかじめ30万~100万円程度の予納金を納める必要があるということです。
不在者財産管理人から報酬の請求があった場合、家庭裁判所の判断により、不在者の財産から支払われることになります。報酬額は管理の煩雑さ等の事情によって異なりますが、目安としては月額1万円~5万円くらいです。
そのため、不在者の財産が乏しく、不在者の財産から不在者財産管理人への報酬等の管理費用を捻出することが難しいと家庭裁判所が判断した場合は、家庭裁判所は申立人に対して30万~100万円程度の予納金の納付を求めます。管理費用に充当された予納金は返還されません。
あらかじめ高額の費用を家庭裁判所に予納しなければならないという点もふまえて、相続手続きを進めていくことが重要です。
上記のように行方不明者がいて相続手続きをどう進めればよいかがわからない方は、広島相続遺言まちかど相談室へお越しください。どちらの手続きに関しても広島家庭裁判所等への申立てをしなくてはならず、専門的知識を必要とします。お手続き方法も無料相談にて、ご案内させていただきます。